森と人をつなぐ取り組み 〜横須賀市・森林整備モデル事業〜
荒れた森に、もう一度ひとの手を
令和5年度より、HFCは横須賀市近郊緑地特別保全地区で行われている
**「広葉樹の森林整備モデル業務」**に参画しています。
プロポーザルを経て選定されて以来、私たちは3年にわたり、
森の再生と利活用をテーマに現場で整備を進めてきました。

この取り組みの目的は、ただ木を伐ることではありません。
長いあいだ人の手が入らず、荒れてしまった森をもう一度“人とつながる森”に戻すこと。
横須賀の自然が持つ力を守り、活かすための新しい森のあり方を探る試みです。
市の思いと、わたしたちの役割
横須賀市では、エネルギー革命以降に利用されなくなった樹林地が各地で荒廃し、
防災面・自然環境面ともに課題が生じています。
しかしその現状は、市民の多くにあまり知られていません。

そこで市は、「見えるモデル」をつくることにしました。
現場を整備し、望ましい樹林地の姿を実際に見てもらうことで、
どんな森を残していくべきかを市民とともに考える。
HFCはこの方針のもと、実際に手を動かしながら未来の森のかたちを描く役割を担っています。
森の中での作業と変化
現場では、まず人が安全に出入りできるように作業道を整備しました。
これにより、風の通りやすい森となり、日差しも地面まで届くようになります。

さらに、枯損木の伐採や間伐を行い、健全な樹木の育成を促しました。
伐った木はただ処分するのではなく、木材として地域の中で活用しています。

市役所のベンチや、地元高校の美術教材などに使われた木材もそのひとつです。
整備と利用がつながることで、森が「地域の財産」として生まれ変わっていきます。

森林空間の活用と人のつながり
整備によって生まれた広場や通り道は、地域団体や学校、環境NPOなどによってワークショップや体験学習の場として使われています。

子どもたちが落ち葉や枝でアートをつくったり、未来の担い手不足解消に向けて、高所伐採のトレーニングや子供たち向けの伐採見学やハイキング形式の植生解説など。
森の中でのこうした活動は、自然との距離をぐっと近づけ、「自分たちの森」という意識を育ててくれます。
整備は終わりではなく、そこから始まる人と森の関わりの場づくりでもあります。
循環する森を目指して
伐る、使う、育てる——。
このサイクルを繰り返すことが、森を持続的に守る唯一の方法です。

木を燃料や素材として使うことは、一見「破壊」のように見えて、実は森を再生するための手段でもあります。
整備で生まれた木材を地域の中で再利用し、さらに枝葉や端材をバイオマス資源として活かすことで、森の恵みを無駄なく循環させていく。
森と人、エネルギーと暮らしがつながる——そんな仕組みづくりが進んでいます。
これからの展望
今後も、横須賀市が目指す「人と自然が共にあるまちづくり」に沿って、HFCは現場からの提案と実践を重ねていきます。

市民や地域団体と連携しながら、森の魅力を伝えるイベントや、体験プログラムを充実させること。
そして、整備と利用の両立を実現する“生きたモデル”を広げていくこと。
森は誰かが守るものではなく、みんなで育てていくもの。
その思いを胸に、これからもHFCは森づくりを続けていきます。
(文:松本)