蘖(ひこばえ)と萌芽更新
HFC(一般社団法人 葉山の森保全センター)は、三浦半島各地で広葉樹林の管理を進めています。伐採後の切り株から芽吹く**「蘖(ひこばえ)」**は、森が自ら再生する力。この記事では、萌芽更新がもたらす防災・生態系・資源活用のメリットを、現場の実感とともに紹介します。
※本稿は過去のInstagram投稿を加筆修正したものです。

蘖(ひこばえ)と萌芽更新とは
- 蘖(ひこばえ):切り株や根元、幹の下部から出る若芽。
- 萌芽更新:伐採後、残った根や切株から芽が伸びて森林が再生すること。
一般に広葉樹は萌芽能力が高く、伐採後も再生します。一方でスギやヒノキなど針葉樹は萌芽しにくいため、伐採後は植林など人の手による更新が必要になることが多いです。
三浦半島の森の特徴
三浦半島の森林は約8割が広葉樹林(竹林含む)、残りがスギ・ヒノキの人工林。HFCが横須賀市や京急からの委託で管理している現場でも、高齢化・大径化した樹木の倒木リスクや、砂岩主体の地層で表層ごと剝がれる転倒など、地域特有の課題に向き合っています。

萌芽更新の主なメリット
- 斜面防災:根が生き続けるため土壌保持力が維持され、伐採直後の不安定化を抑制。
- 早期回復:植林を要さず自然再生が進むため、裸地化の期間が短い。
- 生物多様性:広葉樹林は多様な生物のすみかとなり、季節変化も豊か。
- 持続的利用:同じ土地で繰り返し資源を得られる(伝統的な薪炭林=萌芽林の知恵)。
- 森林空間の活用:手入れ後は見通しが良く安全性が高まり、教育・体験・健康などの場としても機能。
現場で実感していること
高齢木は重心が高く、強風で煽られると危険です。計画的に伐採して重心を下げることで倒木リスクを大きく減らし、ほどなく蘖が再生。私たちはその成長を見守りながら、下刈り・間引き等の保育管理を進め、安全で多様性のある里山へと導きます。
伐った木の活かし方
伐採材は炭・薪・家具材・アート材・小規模建築・産卵床・きのこ栽培・酵素風呂など、適材適所の利用を行っています。資源を無駄にしないことが、次の世代の森づくりにもつながります。

まとめ
「伐って終わり」ではなく、伐って・使って・再び育てる。広葉樹の萌芽更新は、防災・生態系・資源循環・森林空間サービスを同時に支える仕組みです。HFCは三浦半島の実情に合わせ、地域とともにこの循環を丁寧に回していきます